2.日帰り白内障手術について
白内障手術は目から濁った水晶体を取り除き、代わりの人工レンズ(眼内レンズ)を入れますが、望ましいレンズは患者さんによって違いますので、診察で生活スタイルを聞きながら、一番目的に合うレンズを選びます。
【 眼内レンズの種類について→ 】
手術は点眼麻酔で行いますので麻酔の注射は行いません。 これは局部麻酔ですので、手術中も周囲の声は聞こえます。手術中に痛みはありませんが、顕微鏡の光のまぶしさや、器具のさわる感じはわかります。眼球運動は制限されていませんので、手術中は一点を見つめていただきます。まず、眼の周りを良く消毒し、黒目と白目のさかいを3mmくらい切開します。 つぎに、水晶体の前の膜を円形にとりのぞき、そこから超音波白内障手術装置を用いて中身を吸い出します。あとは眼内レンズを挿入して手術は終了です。切開を加えてから終了まで20〜30分くらいです。
また、白内障手術を少しでもご安心いただけますよう、手術の様子がご家族様にご覧いただけるよう、手術室にガラス窓を設けております。
最近の眼内レンズはアクリル樹脂で出来ており、やわらかいので折りたたんで目の中に入れます。
上図はアクリル眼内レンズの進化を示します。視力の向上を目的とした付加機能が付いたものが開発されています。
アクリル素材のレンズを使うことにより、小さな傷口から眼内にレンズを入れることが可能になり、術後の乱視が減りました。
グレア、ハローは眼内レンズを入れた後の見え方の特徴で、眼内レンズの直径が水晶体よりも小さいため、レンズ周辺部を通って目の中に入った光がばらつき、みにくいことがあるのです。これを抑える工夫がなされるようになりました。
シングルピース(一体成型)の形状にして目の中で安定がよくなりました。 着色、非球面にした眼内レンズは、目に入る青色光を抑えて視界がハッキリする、運転時に見やすいことが特徴です。まぶしさが気になる方、日中戸外にいる時間が多い方は、着色レンズがよいでしょう。
多焦点レンズは、遠くと近くにピントを合わせることが出来る、つまり遠くも近くも見やすいことを目的として作られたのですが、前述のグレアやハローがつよく出て、術後時間が経っても見え方に慣れないことがあります。 また現状では健康保険が適応されないため、自費診療になり高額です。
円柱度数が入ったレンズは乱視矯正用の眼内レンズですが、乱視が強い方、精密な作業に従事したり、読書やコンピューターの作業時間が長い、また裸眼視力の向上にこだわる方によいと思います。
他にもレンズの外径が大きく、グレア、ハローが抑えられ、透明度の高い素材を採用したレンズ(エタニティー X-70)は、若い方、目の大きい方、目の奥の網膜や視神経に病気があり、定期的な眼底検査が必要な方に望ましいと言えます。
白内障手術は最も安全な手術の1つですが、全く危険がないとはいえません。可能性はかなり低いものですが、以下のようなリスクが起こりうることを予め知っておいていただきたいと思います。
ショック
点眼麻酔により危険はほぼ無くなりましたが、キシロカインなどの麻酔でショックがおきることがあります。万一の場合、直ちに然るべき処置をとります。救急医療施設へ搬送する場合もあります。
駆逐性出血
手術中に眼圧が下がることによる脈絡膜からの出血のことです。超音波白内障手術の導入以前は、駆逐性出血が原因で失明することがありましたが、超音波白内障手術の導入により頻度は少なくなり、駆逐性出血による失明もほとんどなくなりました。万一発生した場合、一旦手術を中止し、後日続行することになります。
後嚢破損
手術中に水晶体の袋が破れることです。後嚢破損を生じても眼内レンズの挿入は可能で、視力予後もおおむね良好ですが、視力の回復が遅れたり手術が2度にわたる場合があります。